田んぼの国土保全機能

稲作開始から律令国家の成立。室町時代から江戸時代にかけて。この2度の新田開発ブームにともなう国土改造により、日本列島は現在の姿がほぼ形づくられました。

高い土地を削って低い土地に切り盛りし、水路を管理して水田地帯に変えていく。人が住める平野に変えていく。それは、営々とたゆみなく続く作業でした。農業を営む人々が米作りのために日本列島を作りあげたのです。

私たちが最初から平らな土地だと思っていたところ、最初から川だと思っていたところ。豊葦原の瑞穂の国と言われる美しい風景。それは田んぼが作った国土です。先祖が田んぼ作りを通して現代に贈ってくれた国土なのです。

そしていまも田んぼは、国土を守っています。

田んぼは土壌の流出を防止する緑の堤防です。

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日本は火山国のために土がもろくて、また地震が多くて揺れ動いています。しかも雨が多いうえに斜面が急です。これらの条件が揃ってしまったため、日本は土砂の流出が多い国となっています。雨のたびに水は山を削り山を崩し、土砂を運んで絶えず地形を変えていきます。土砂の流出量は世界の平均の7倍にもなっており、年間1ヘクタールあたりで25トンが流出しています。

田んぼはダムと同じ作用をして水を受け止めていますが、同じように土砂も受け止めて、下流に流さないようにしています。

棚田のような急斜面にできている田んぼは全体の15%にものぼっています。その土砂流出防止量は年間130万トンに達するともいわれています。

たんぼは土壌の侵食 (しんしょく) を防止しています。

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土壌侵食とは、水食または風食によって表土が削りとられる現象です。

侵食によって流出した土は川や湖、沼、海に流れ込んで水質汚濁を引き起こし、生物などに悪影響をおよぼします。また、風食によって大気中に浮遊した土の粒子は、人間や動物の健康に直接、害をおよぼすこともあります。

作物生産力の高い表土が土壌侵食によって失われると、作物収穫量は減少します。

田んぼは水に守られており、豪雨のときでも雨粒や水流による侵食をほとんど受けません。雨粒が水面に衝突し、直接土の表面を削ることがありません。また、水がない冬場でも水分含有量が高く、土壌粒子が強く結びついていて丈夫です。また稲の刈り株に覆われているので、風による侵食もほとんど受けません。

田んぼは土砂崩壊を防止しています。

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急峻な山地、谷地、がけ地で集中豪雨や地震、雪崩があった場合、土砂崩壊や地すべり、斜面崩壊、土砂流などの危険があります。

土砂災害の危険箇所は全国でのべ24万カ所以上あります。

  • 地すべり危険箇所   1万カ所以上
  • 急傾斜地崩壊危険箇所 7万カ所以上
  • 山腹崩壊危険地区   8万カ所以上
  • 崩壊土砂流出危険地区 8万カ所以上

このような地域の田んぼでは、農家の手による土地管理が土砂の崩壊を防止しています。

棚田では、畦の補修や排水路整備、床締めなどが日常的な営農作業として実施されています。このことにより土砂崩壊や土壌流亡が未然に防止されています。

田んぼは日本の土壌問題をクリアし、収穫力を向上しています。

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日本列島は土の層が比較的薄いのが特徴です。これは新しい土壌が多いことと表土が流れていっていることによります。また雨が多いので、土壌中の塩基類などの養分が流出し、酸性になりやすくなっています。また、火山灰の土壌が多く、軽くて風で飛ばされやすくなっています。

土の層が薄いということは、根の広がる部分が少なく、養分や水分の量が少ないということにもなります。土壌が酸性になると植物の生育が悪くなります。農作物では中性の土壌を好むものが多いのです。このように日本の土壌は、もともと作物の生産に最適の土地ではありませんでした。

田んぼはこれらの課題を解決する画期的な装置です。水が溜まっているために、土の層が薄くても水分不足にはなりません。また、水を溜めると土壌中の酸素がなくなって土壌は還元状態になり、酸性を中性に変化させます。また、リン酸が作物の根で吸収されやすい形に変わります。火山灰でも、水が溜まっていれば風に飛ばされません。

田んぼは画期的な発明で、これにより日本のいのちを支えてきました。